柔道は日本のアマチュアスポーツの中で特に歴史が古くてメジャーな存在ですが、このスポーツをより深く理解するためには競技の統括団体についても知っておく必要があります。現在の日本におけるこの競技の統括団体は「全日本柔道連盟(全柔連)」で、東京都文京区にある講道館の本館ビル内に連盟の本部が設置されています。
柔道は嘉納治五郎によって1881(明治14)年頃につくられたスポーツであることは多くの人の知る所ですが、全柔連が設立されたのは第二次世界大戦後の1949(昭和24)年5月で、このスポーツがつくられてから70年近い年月が経った頃のことでした。初代会長は嘉納治五郎の次男で当時講道館の館長だった嘉納履正で、1952(昭和27)年に国際柔道連盟への加盟承認や、1956(昭和31)年の世界選手権開催、1964(昭和39)年開催の東京オリンピックでの正式種目の採用は嘉納履正の貢献が非常に大きいと言われています。嘉納履正が1980(昭和55)年まで30年余りにわたってつとめた会長職を退いた後は、彼の長男である行光が2009(平成21)年3月まで会長をつとめ、年齢や家族の介護問題などを理由に辞任した後は上村春樹、宗岡正二、山下泰裕と嘉納家以外の者で、現役時代に顕著な実績をおさめて指導者としても活躍した者が会長に就いています。
全柔連の内部は理事会を中心とし、8つの部署から成る事務局と13の専門委員会、4つの経営管理委員会、および独立委員会のアンチ・ドーピング委員会から成ります。47都道府県それぞれに設置されている柔道連盟と学生・実業団・視覚障害者の各全国団体はすべて全柔連の加盟団体(下部組織)となっているほか、全国高等学校体育連盟(高体連)の専門部と日本中学校体育連盟(中体連)の競技部も構成団体として傘下におさめており、非常に大きな組織です。国内の主要な大会は、ほとんどが全柔連およびその加盟団体の主催のもとで開かれています。
全柔連の内部では、長い歴史の中で様々な不祥事やトラブルが起きています。記憶に新しいものでは、2013(平成25)年に複数の理事が日本スポーツ振興センターから助成金を不正に受け取って目的外利用していたことが発覚したことと、2020(令和2)年に役員と職員の合計19名が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染していたのが明らかになったことが挙げられます。特に前者の助成金不正受給では上村春樹会長の引責辞任にも発展し、世間から大きな批判を受けました。